美容師ONLY

No.74

2006年12月31日

スタジオワーク
あの時こんな事が・・・

左の写真は1980年代に山本が開発し14カ国の国際特許を取得したヴェールパームのポスターである。
MEROS社が全国に器具と薬液を販売する為にキャンペーン用のポスターを撮影。

今回は撮影にまつわるエピソードをご紹介します。

当時のメロス社の本社は池袋サンシャインビルの一画にあった・・・。
系列会社のレノマコスメティックの社長の国谷氏が山本が開発したパームシステムに注目し、国内の独占販売契約を結んだ後は全社を挙げての取り組みとなったのである。
「ポスターは山本さんに手伝ってもらいたい・・」との要請でモデルのオーディションから撮影に至るまで国谷社長と広報担当者が親身になって山本をサポートをしてくださった。
フォトグラファーも当時の商業写真では注目株の長濱修氏が担当した。
その当時はまだブロードライが全盛で、ナチュラルドライのスタイリングを美容師に理解してもらう為に苦労の連続だったが、このポスターのボリューム感を抑えたウェーブヘアのお陰で、日本人に適したパームヘアというコンセプトは大ヒットした。
ポスターの評判が良くて広報担当者から感謝された事が20年を経た今でも思い出される。
当時新人モデルだった彼女が今何処にいるのかは分からないが、本人がとても気に入ってくれたのが何よりのクリエーションだった。

それにしても長濱氏の撮影はとても興味深かった。モデルの仕込みが終わるまではリラックスタイムという事で、持参のサックスを吹いて楽しんで(楽しませて・・)いたかと思うと、準備が整ったモデルを見るやバックのロールスクリーンの色を選び、助手に的確な指示を出す。
全ての準備が整ってからはモータードライブがフィルムを巻き上げる音とシャッター音があっという間にモデルの表情を刻む・・・。
135mmの一眼レフでこの解像度を実現出来る氏の腕前はもちろんだが、バックの色合いとモデルのメークに至るまで、総勢15名程のスタッフが一日かかって取り組んだ傑作だ。

左の写真は10数年前、百日草誌の表紙を担当させて貰った時のものだが、7月初めのリリースという事で、夏のサロン向けの楽しいワンショットを創作した。

百日草誌の表紙はその時々に注目される技術者が担当する事で有名なのだが、この年は光栄にも8月号を担当させていただいた。
通常のヘアデザインの創作と異なり、表紙はその雑誌のイメージを決定するものなので、この時は随分と悩んだ事を思い出す。
その時に出した結論は、技術者としてテクニックへのこだわりを捨てて、ただひたすら雑誌のイメージを高める事、爽やかで印象に残る事、そして品良く・・・を追求した。
シンプルで健康的な表現をする為にウェットヘアそのものを見せることにした。
最もこだわったものと言えば生のクローバーをアクセントに使った事で、これは当日の朝、秋田市の手形山の支店の庭から土をつけたままそーっと東京のスタジオまで運んだ。(もちろん飛行機で・・)
この写真には写らなかったが、実はモデルの足下にも沢山のクローバーが敷き詰められていたのである。
もちろんモデルは全て逆さになっていた訳ではなく、正立のショットがほとんどの中で最後のひと遊びとしてモデルに逆さになってもらったのがこのショット・・・なのである。
当時はまだイナバウワーという言葉すらなかったのだが、この表紙が荒川静香選手に影響を与えた・・なんてことはない・・・はずだ(笑)
モデルも結構気に入ってくれたようで、クローバーをくわえて良い雰囲気を作り出してくれた。
この作品もインパクトがあると云う点では上のメロス社のポスターと同様に計算されたイメージに偶然の良い瞬間が加わったもので、お気に入りのショットである。

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